2017年1月11日水曜日

地域政策のBooKs:2016

地域政策のBooKs


 昨年、芋ずる式に読んだ本だが、相互の関連性は強く実践的な「地域政策」の実体を読み解いたものだった。次は労働と生活、生き方やライフスタイル「半農半X」・塩見直紀も読んでみたい。

『くだり坂をそろそろと下りる』:時代認識
まことに小さな国が、衰退期を迎えようとしている。」どこかで見たか、聞いた言葉ではじまる。「衰退期」を「開化期」に変えれば、『坂の上の雲』である。司馬遼太郎に代わって劇作家であり演出家・平田オリザが、現代社会に生きる心構えを答えたものである。日本は、もう工業立国や成長社会、アジア唯一の先進国にもどれないという、時代の三つの「寂しさ」に向き合うことを基調にしているが、暗い話ではない。大都市と地方では異なる「人口減少」に切り込んで、今もっとも欠けている文化政策面から楽しさや喜びを生み出す事を提案している。著者曰く『里山資本主義』の文化版だそうだが、同じ新書版で手軽に読めるのも良い。平成の『坂の上の雲』を読んだ気持ちになった。
平田オリザ『下り坂をそろそろ下りる』講談社現代新書2016

『里山資本主義』:地域経済
「世の中の先端は、もう田舎の方が走っている」。それは現在進行形の人口減少社会では、過去の発想を変え「一人一人の相対的な価値の高まる社会」とみれば、もう里山の麓から始まっている。広大な森林、空き家、腐らせている野菜=宝物、役立つ・張り合い=生き甲斐など地域資源を活かし里山の智恵を発揮し「無縁社会の克服」と「地域循環型の経済」を展開すると「2060年の明るい未来」が訪れると著者はいう「地域の赤字はエネルギーとモノの購入代金」、真庭市@岡山では木質バイオマス発電を核にした里山資本主義の先進事例は迫力がある。
藻谷浩介・NHK広島取材班『里山資本主義』角川書店2013

『創造的地域社会』:付加価値を生み出す自立コミュニティ
「過疎」は島根県から起こった。中国山地の3つの空洞化は、人(転出、高齢化)、土地〈耕作放棄地の増大〉、むら(集落機能の後退)で、今やどこの地域にも広がっている。
65歳以上が人口の半数を占め、社会的共同の維持が困難となり、さらに過疎から限界集落に展開。
大量生産・消費・廃棄の経済成長システムから脱却した内発的な経済観を「創造性」や、農村コミュニティの関係性を見直す互恵的な贈与・結の新たな「コミュニティ」、官に依存しない新たな公「自立」などの3つのキーワードで切り結ぶ。商工と農の壁を越える地域・産業政策の邑南町や、農山村を引っ張る「女性起業」などフィールド研究が強み。
松永桂子『創造的地域社会:中国山地に学ぶ超高齢化社会の自立』新評論2012

『地方創成大全』:地域創成手法の見直し
図書館で偶然を見つけた本を一気に読んだ。今年の10月末に出版された『地方創成大全』。タイトルからして地方創成の成功事例集かと思ったが。
話題の「ゆるキャラ」「プレミアム商品券」「道の駅」「ふるさと納税」などが、実体としてほとんどに失敗が多く、地域の活性につながらないのかの原因を「ネタ・モノ・ヒト・カネ・組織」の5つの面からリアルに物語るのが非常に面白い。
著者は、地域で補助金は活用せず、自ら稼ぐ事業を興す「まちビジネス事業家」、役所の人間やコンサルでないのでスタンスが明快。地域モノのバイブルのような本だ。拍手。

木下斉『地方創生大全』2016.10東洋経済新報社

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